先日、参画先の社長と話していたときのことだ。
新規事業を進めるにあたり、社長がこんなことを吐露していた。
「撤退判断が1番難しい。必ず成功させてやるというマインドがあるから、撤退判断は隅の方に追いやられてる。」
「でもそれが致命傷に繋がる可能性もあることもわかっている。」
これぞ創業者よ。もうね、尊敬しかないわね。
今まさに未開の戦場で戦っている隊長が、部下に向かって「ワイは撤退も頭に入れてるから」と言ったらどうなるか。
まぁ普通は冷めるわな。
隊長自身が「これしかない」と狂気じみたフルコミットで突進しているからこそ、その姿が求心力になり、メンバーの「やらなあかん」という思いに火がつく。
特に営業や販売の現場というのはそういうものだと思う。理屈ではなく、熱量と勢い、そして「全員でやり切るんだ」という空気感そのものが不思議な力を生む。
だから、社長の「撤退の可能性」は、少なくとも適切な状況(時機)が来るまでは公言するものではない。現場の推進力を自ら削ぎ落とす愚行に他ならないからだ。
もちろん、そのままノーガードで突っ込ませる訳にはいかない。そんなことをしたら当然、致命傷を負うリスクは跳ね上がる。
(あ、あと、言うまでもなく、何も考えずに突撃しろと言っている訳でもない。OODA-Loopを回すことは大前提条件ね。)
そこでじゃあ誰が”撤退路”と”兵站”を確保するのかというと、コーポレート側の人間の出番だと思うのだ。
社長には100%前を向いて突進してもらう(少なくとも、公ではそう見せていてもらう)。
その代わり、万が一その事業がコケた場合でも会社が死なないよう、事前に撤退条件も押さえておく。そして、別の収益チャネルの確保や資金繰りの迂回路といった「腹案」を、裏で人知れず潜ませておく(もちろん、そんな腹案があるなんて公には言わないよ。)。
事業における「推進」と「リスク管理」というのは、多くの人にとって1人の人間の中で綺麗に両立できるような器用なものではないと思う。もちろん、両立できるとんでもなくすごい人がいることは知ってる。
突進して人を巻き込む役割と、最悪の事態を想定して迂回路を確保し続ける役割。
この2つが別々の人間によって分業されるということも、「組織」の効能ではないか、と思う。
「社長の背中を預かる」にも様々な形があるものだと、ここ5~6年肌で感じる場面に出くわすことが増えた。少しは「左腕」の役目を全うできるようになったということだろうか。
若いうちに幅は広げておくに越したことはないものなのだなぁ、と今さら思っている。ゼネラリストな気質がまさかこの歳になって役に立つなんて、なぁ。
当時はスペシャリスト、才能、というものに憧れてました。へへっ。